[CapitalCityfootball]東京を深く愛す男。FC東京 アルベル監督とは?哲学・戦術に迫る。戦術編

FC東京

 弱者から強者へ。カウンターサッカーからポゼッションサッカーへ。そして、東京を青赤に。アルベル監督は首都 東京に対して強いリスペクトを持つ。彼の哲学はFC東京をどう変えるのか。

哲学編:[CapitalCityfootball]東京を深く愛す男。FC東京 アルベル監督とは?哲学・戦術に迫る。哲学編 | 未熟な戦術家 (conohawing.com)

前回はアルベル監督がどんな哲学を持ちながらFC東京で指揮を取っているのかを見た。

今回ではアルベル監督の持つ戦術概念ついて語っていく。

戦術

 アルベル監督の目指すサッカーは強者のサッカー。ポゼッションサッカーである。アルベル監督が行うポゼッションサッカーを理解するには彼がバルサにいた時代の監督 ペップ・グアルディオラ(マンチェスターシティ現監督)の体現している戦術を理解していく必要がある。

ポゼッションサッカーの源流

 ポゼッションサッカーはいつ生まれたのだろうか。いや、生まれたという言葉は必要ないのかもしれない。

 例えばだが、サッカーの経験者のみのチームと初心者だけで構成されたチームが分かれて試合を行ったとしよう。経験者チームは選手のボールを扱う技術、パスコースを見つける能力、単純な身体能力(普段運動しているしていないで考えてほしい)が高く、ミスをしにくい。

 そうするとボールは能力が高いチームに集まり、初心者チームにボールは渡りにくく、いわゆる経験者チームのポゼション率は自然と高くなる。一方、初心者チームは一点でも失うまいとゴール前を固めて前線にボールを送ろうとする。これが極端だが自然体なサッカーでありポゼッションサッカーとカウンターサッカーの源流といえる。(わかりやすくしているので現実のサッカーはこの限りではない)

 しかし、そこから戦術という要素が入ってくると話が別だ。逆に相手にボールをわざと持たせて正確な守備と激しいプレスでボールを奪い速攻でカウンターを行うチーム(例:リヴァプール)が出てきたり、大金をかけ世界中からボールを扱う技術の高い選手をそろえ完璧に自分たちのペースで試合を支配する”ポゼション”を行うチーム(例:マンチェスターシティ)に分かれてくる。

 ポゼッションサッカーは基本的にどこで生まれたというのはないのだろう。しかし、明確にムーブメントを起こした監督というのは存在する。それは1965年にオランダのクラブチーム アヤックスの監督となったリヌス・ミケルスである。

 リヌス・ミケルス政権下のアヤックスは70-71シーズンにCLを制覇することになる。1974年にはオランダがポゼッションサッカーで1974年にWカップを優勝した。これらのチームは「トータルフットボール」と呼ばれ、後のバルサ監督 ヨハン・クライフに引継がれている。(ヨハン・クライフ:ペップ・グアルディオラが一番大切にしている哲学はクライフのものとされている。)

 ペップ・グアルディオラがバルサの監督になったのはこの12年後である。そして、07-08シーズン ペップ・グアルディオラがFCバルセロナの監督をしていた時、バルサの監督はフランク・ライカールトヨハン・クライフ アヤックス監督時代の教え子である。

ペップ時代のバルセロナの戦術 08-12年まで

 ペップ・グアルディオラはバルセロナ時代どのような戦術をしていたのだろうか。

 フォーメーションの基本は4-3-3ボールを圧倒的に保持することで相手に攻撃させずゴールを奪われない。ある意味攻守一帯の戦術といえる。そして、この時代のバルサにはこの戦術を可能にさせる傑物がすでに活躍している。リオネル・メッシである。

 ペップ・グアルディオラがバルサ史上最高のプレーヤーを見出すこととなる。メッシはグアルディオラが監督になるまで多くても17ゴール。十分に化け物なのだが、今の彼には似つかない数字であった。しかし、グアルディオラが指揮したその年に38ゴールを挙げ(前シーズンは16ゴール)、前シーズンから二倍の数字へ。そして、グアルディオラがバルサを去るシーズンにはシーズン通算73ゴールを挙げた。

 この傑物の起用方法こそペップバルサの戦術といってもよい。0トップ戦術である。

 0トップ戦術とは前線の両ウイングを常に高い位置でしかもライン際に固定しておく。これにより相手DFのラインはその選手たちに合わせなくてはならなくなる。そして、CFのメッシが自由なタイミングで中盤におりてきて、相手のCBを錯乱させる。

 相手のCBがなぜ錯乱するかというとワイドに開いたウイングに合わせているラインでメッシのマークの為に中盤に落ちてしまうとゴール前に大きなスペースができてしまうため、リスクが大きい

 そして、メッシが降りてきたことに対して中盤には数的有利が生まれるが相手はCBが上がることはできない。そして、一番重要なのはメッシのポジショニングである。相手ボランチにも相手CBにも捕まらない絶妙な位置でボールを受けるため、メッシにドリブルをされるともう止められない。こうして、末子は傑物として完成されていった。

簡単な説明になったが大まかにはこんなところであろうか。ついにアルベルの戦術について語っていこうと思う。

アルベルの戦術

 アルベル監督の使用フォーメーションも4-3-3である。直近の最高の試合をした時のスタメンも載せておく。

戦術哲学

2022シーズンのインタビューにおいて

Q、今後チームはどういったフェーズに入っていくのでしょうか?
A、「よりパーフェクトな形で試合を支配する」というフェーズです。ただ、極端に高いボール保持率で試合を支配するということを、私は思い描いていません。ただボールを回していればいいわけではないということです。適切な形でボールを保持して試合を支配し、ゲームに勝つことをめざしていきたい。ボールとともにプレーし続けて選手たちの自信を促していく。それが成長や試合の支配につながると考えています。ただその前に、まずは新しく加わる選手たちに我々のスタイルを理解してもらい、チームに適応させなければなりません。一方で、私が絶対にやらないのは、日本っぽいスタイルを取ることです。

引用:[2022シーズンレビュー] アルベル監督インタビュー | F.C.TOKYO FANZONE | FC東京 (fctokyo.co.jp)

 こう語ったアルベル監督。近年のサッカーではポゼッションサッカーは決して強いサッカーではないといわれている。それは、ボールをいくら保持していても自陣のみでボールを回しカウンターをくらい失点。これでもポゼション率は高くなる。

 上記の現象は、基本的な解釈が違う。実際のところカウンターサッカーとポゼッションサッカーには明確な強さの違いはない。守備陣が世界トップクラスのチームがやるカウンターサッカーはとてもやりずらく、有名な戦術カテナチオはポゼッションの戦術ではない。

 しかし、超高度に組まれたポゼッションサッカーにおいては別である。なぜなら人は”ボールより早くうごけない”からだ。サッカーにおいて内容を理解しておらず見様見真似の最新型やトレンドを使用した戦術は最強の戦術ではない。しかし、ごく細密にそして限りなくミスすることなく組み立てられたポゼッションサッカーは相手選手のプレスより早くボールを動かすことができ奪われることはない。

 アルベル監督が求めているのは、相手よりポゼッションを高くしたうえでゲームに勝つことだ。そして、日本のサッカースタイルには迎合しないということである。

 非常にバルセロナの戦術に似ていると評価できるアルベル監督の戦術だが。しかし、現実でみる戦術は多くの人が異なると考えているのではないだろうか。

 今のFC東京はカウンターサッカーと表す方がよい。相手にボールを持たし、迅速なるボール奪取。ゴールに向かい点を奪う。このようなシーンが多い。

 直近の川崎フロンターレとの多摩川クラシコでは間違えなくカウンターサッカーであったし、その戦術によって勝利したといえる。

 この矛盾に対し著者は、アルベル監督の”今”の戦術はポゼッションサッカーとカウンターサッカーのミックスであると評価している。長いことカウンターサッカーをしてきたチームにいきなりポゼッションサッカーを仕込んでも上手くはいかない。そのため、得意のカウンターに自身の教え込んだポゼッションサッカーをうまく練りこみ少しずつシフトしていく。

 その最たる例がディエゴ・オリベイラの0トップ化である。アルベル監督がFC東京に来てからディエゴ・オリベイラは中盤におりてきてボールをもらうような動きが極端に増えた。狙いは同じ。中盤での数的有利を得たい。

 そして、ペップグアルディオラがボランチのマスチェラーノをCBにコンバートしたのと同じように、アンカーもできる木本選手をCBで起用する。DFラインからの縦パスでのビルドアップが狙いが強い。

Q、渡邊凌磨選手に与えた役割はなんですか。
A、川崎のように明確に4-3-3でプレーしてくる相手、両ウイングとセンターフォワードを置く相手には中央で優位性を持つことが重要になってきます。それゆえに最初の立ち位置は左ウイングだったわけですが、攻撃の際にはそこから中央に流れて来て、中央で4対3の数的有利を作る動きを求めていました。4-3-3の逆三角形で中盤を組んで来る相手に対しては、ワンボランチの脇が攻撃をする際の効果的なスペースになります。そのスペースを突くタスクを渡邊選手と安部柊斗選手に与えていました。

引用:5/12 川崎戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW | F.C.TOKYO FANZONE | FC東京 (fctokyo.co.jp)

 守備時にはウイングは中央にボールをもらいに来る動きを見せる。中盤はパスサッカーを中心にしたというよりリヴァプールのゲーゲンプレスのような激しいものである。これは4-3-3フォーメーションの非ボール保持時の鉄則だといえる。一つ異なるのは、FC東京の場合自分たちのボールにして試合を優位に進めるためのプレスではなく奪った後でゴールに向かい得点をとるためのプレスである

 このサッカー哲学的にミックスされた状態が最高の形で現れたのが多摩川クラシコである。この試合何といっても、ペップグアルディオラが0トップを攻撃なものとして利用した。(メッシが中央での人数遊離を作りゴールに向かう)しかし、アルベル監督はディエゴ・オリベイラを”守備的な0トップ”として起用したのである。

 本来の0トップはアンカーに捕まらない位置におり、なおかつCBにも捕まらない。しかし、アルベルの披露した0トップはアンカーを0トップで抑え相手の戦術を機能不全に陥らせるとともにCBにボールを持たせウイングで絞るように取りに行く。そして常に中央では数的な有利を作り出せる。こうして、自分の持ち込んだポゼッションサッカーと元々あったカウンターサッカーを融合させたのではないかと考えている。

完成には程遠い

 しかし、一方で0トップ戦術には程遠い戦術自体の乖離がみられるのも事実である。これはまったくもって完成されたサッカーではない。言わば、まだ蛹。完ぺきではないから今手元にある素材で組み合わせただけの不完全なもの。

 方向性がこれであるのならいいが、首都東京がする強いサッカーとはこれでは言えない。

 今のFC東京にはメッシもいなければイニエスタ、シャビ、ブスケツもいない。そもそも、ポゼッションサッカーをやるためのピースがそろっていないのである。

戦術を融合させたのはアルベル監督のリアリストな一面であろう。だが、改革はまだ途中。旅はまだ続いていくのだ。

 では、どのようなピースがFC東京には必要なのか。強い東京になるためには何が足りないのであろうか。

→革新編に続く。お楽しみに。

※ここからはアルベル監督だけの考えではなくポゼッションサッカーを行うために何が足りないかの予測の部分になります。著者の意見が大きく関与してきます。

 

FC東京ユースを観戦するのはこちらから

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

J SPORTS(ジェイスポーツ)オンデマンド

こちらからの登録でFC東京U-18が出場する高円宮杯が見放題

コメント

タイトルとURLをコピーしました